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まさかの

今年、新しく手に入れたもの、免許証。
そして、5ヶ月後、お下がりの、初心者で3人家族にしては
10年ものの、かなりでかい車を父から譲り受け
念願のマイカー通勤を開始した。




タダでもらったとはいえ、タイヤをはきかえ、
エンジンオイルを替え、駐車場の保証金を払ったりと
それなりの初期費用がかかった。

それでも、雨の日でも保育園まで子どもを濡れないよう送り、
そのまま山のうえのキャンパスまで一直線に登っていける、
それは夢のようだった。

特に、保育園から大学に向かう道路や、
家のそばのイチョウ並木は、美しかった。
授業が終わり、暗くなるなか、日本初、
オーバー45のためのFMCocoloのDJが
軽快な語りと懐かしのメロディーをかけるなか、
緊張をときほぐしながら帰宅するのが
好きだった。
それでもあまりに宣伝が長くて、もういい、という
ときのために、車のカセットデッキでCDやiPhoneの
音楽が聞けるものも買ってみた。
休日には神戸まで、Daryl Hall and John Oatsを聞いて
歌いながら走りつつ、なぜか彼らがキューバでも
ちゃんとヒットしていたという不思議について
語り合った。

そんな日がずっと、少なくとも次の車検までは
続くと思っていた。

土曜日、保育園のクリスマス会のあと、外食し
眠ってしまった息子をマンションのエレベーター
近くで夫に担いで下ろしてもらい、左折して
そのあと転回して駐車場に戻ろう、というときに
ゴン、と遠くで音がした。

しかし、金属の破片が目の前を飛んだ。

白いクリーニングの配達のバンが
数メートル先で止まり、中からオレンジ色の
つなぎを着た従業員が2人出てきて、すぐに携帯で話し始めた。

私も警察を呼んだが、この日は事故が多かったらしく、
かなり遅れたため、道が渋滞した。

相手方も私も大きな怪我がないのは幸いだった。

しかし、バンは動かなくなり、私の車はバンパーが
無惨に落ちた状態になった。
そのままではさすがに危ないので、レッカー車で
運んでもらうことになった。
初めてのことなのでとりあえずディーラーに電話して
持ち込んでもよいか聞いた。

連休と定休日を挟んだので、見積もりはやっと今日来た。
予想をはるかに上回る金額。
右前に当たり、フレームが歪んでしまったのだという。
やはり廃車にするのが妥当なようだった。
譲ってくれた父母も、それでいい、と、言ってくれた。

手に入れてから、早くもいろんな人を乗せて色々な
ところに行った。
すでにボロかったし、大してきれいじゃないと思っていたけど、
なんだかかわいらしく思えた。

多分、大型車だったから、あの衝撃にも私は無傷で
いられたのだろう。

こんな最期にしてしまって、申し訳ない。
あのとき、なんで歩道から車道に出るとき、
もう一度、右を確認しなかったんだろう、と
悔やむけれど、起きてしまったことは
とりかえしがつかない。

それでもありがとう、青いオデッセイ。
40過ぎの初心者を守ってくれて。
とても幸福な秋の思い出をつくってくれて。