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身近なFGM

クリックすると突然、pdfファイルがダウンロードされるのだが
松岡悦子さんの「文化と虐待」(→これです。いきなりダウンロードなので注意)が面白かった。

このブログでも紹介したように、アメリカの小児科医が
生後3ヶ月までの赤ちゃんが泣き止まないときは
手足が動かないように布で巻くとおちつく、という
本を文化人類学の研究をもとに提案している。

でも、そのぐるぐる巻き(スウォドリング)は
西洋の医者には批判されていたんだそうだ。
フランスでも18世紀のパリの子供たちが
田舎の農家に里子に出されるとスウォドリングされて
いたのだが、ルソーがこれを「かわいそう」と批判したとか
19世紀のアメリカ人デューイが、「無知な助産師」が
これを推奨していて、赤ん坊は自由を奪われているとか。

うーん。いかにも育児を実際にしたことのない
お坊ちゃんや学者が考えつきそうな議論である(笑)。
しかし、その後、政治的意図が介入した「研究」に発展する。

1950-60年代のアメリカでは国民性研究が
さかんで、育児法がどのように国民性に影響している
かの議論が盛んだった。
だから、当時「敵国」ソ連で行われていた
スウォドリングは格好の題材だったらしい。
そして、在米ソ連出身者に
ソ連で行われているスウォドリングについて
尋ねると、彼ら自身が「まるで拷問だ」とか
「父は愛情をかけてくれたので私は
されなかったと思います」と答えた調査が
残っているようだ。
そしてそれが、ソ連では赤ん坊のころから
感情を抑圧する手段として行われていたという
ように結論づけられたそうだ。

その当時のアメリカの育児法が、母子の「自立」を促すために
母乳を否定し、抱き癖をつけないように泣いても
抱き上げない、というものに切り替わっていったのと
平行しているところがこわい。

で、最後に人ごとでない話。
文化か虐待か、でよく問題になるのが
アフリカで見られる女性性器切除(FGM)。
最近ではこれが不衛生で危険だというならばと
病院で施術されることが増えているという。
そうすると医療行為だからと、暴力性が
見えにくくなるのではないか、と
松岡氏は問いかける。だとしたら、日本でも
同じく医療行為として出産時になされる
「会陰切開」はどうなのかと。
ほとんどの病院出産では、赤ん坊が出てくるときに
膣から肛門の方に向けて切開を入れ、赤ん坊の出口を広げる・・・女性たちは産後しばらく座ることもままならず、とても痛い。切らなくてももちろん赤ん坊は出てくるけれども、切った方が早く出るとか、切ってから縫った方がきれいに縫える、また切った方がその後子宮脱になりにくいなどと病院で説明されて、切られることが多い。


これに関して、シアーズ博士夫妻は、断固反対、と主張。
日本の出産本だと、一般的なものは
あってもしょうがない、というかんじで、熱血助産師が
書いているものだと、すべきでない、というところ。
私がお世話になっている産院では、できるだけしないと
明言しているし、「そこが助産師の腕のみせどころだ
そうですから」とお医者さんがスタッフの腕を
信じてるところがある。
でも、近隣で出産後「おいしいフレンチが食べられる」ことで
有名な産院は、しません、と言っているわりに、
いざそのときになるとほとんど妊婦に有無をいわさず、
切開するらしい。
というか、された人を2人知っている・・・
当然、痛くて辛いらしい。でも、彼女たちは、
「あまり運動してなくて子宮口が開いてなかったから」
「(会陰)マッサージをしてなかったから」と
自分のせいにしてしまっている。
でもそうなんだろうか。
もしそういう前段階の準備が必要なら、産院の方で指導すべき
だと思うんだが、それも一切なし。
フレンチとか出産ビデオ撮影とか、
かなり早くからの胎児の性別認定とか、
そういう「サービス」で人気があるところなんだけど、
そんなものと引き換えに大事なところに
たやすくメスを入れるってどうよ、とワタシはいいたい。